「先月退職しましたが、システムは今も動いているので、しばらくそのままにしておきます」。システムは人が辞めたその日には壊れません。数か月後、いちばん都合の悪いタイミングで壊れます。ドメインの更新が切れる、サーバーの引き落としが失敗する、脆弱性が自動スキャンに引っかかる。そしてそのとき初めて、サーバーにログインするパスワードすら会社の手元にないことに気づくのです。これは不注意ではなく、こうした情報をリストにまとめて会社に渡した人が、これまで誰もいなかったというだけのことです。以下の 12 項目を、何かが起きる前に取り戻してください。
「システムがまだ動いている」は無事を意味しない
システムが動き続けているのは、すでに設定済みのものが機能しているからであり、誰かが見ているからではありません。しかし期限のあるものが 3 種類あり、期限が来ると必ず問題が起きます。
- 期限のある証明書や更新手続き。ドメインは毎年、サーバーは毎月引き落とされ、暗号化証明書は数か月ごとに更新されます。個人のメールアドレスや個人のクレジットカードに紐づいていると、通知は会社に届きません。
- 誰も対応していないセキュリティの脆弱性。システムの基盤となるパッケージには次々と脆弱性が見つかりますが、担当者が辞めると更新が止まり、穴が開いたままになります。
- 本人しか知らない例外処理。月末に先に実行しておくコマンドや、特定顧客のデータだけ別扱いにする処理など、書面に残していないことは、最初に誰も対応できなかった瞬間にクレームになります。
共通しているのは、今は見えなくても、何かあったときには一気に切迫することです。
まず取り戻すべき 12 項目を 4 グループで
これは私たちが引き継ぎを行う際に最初に確認するリストです。技術的な細かい話は理解しなくてもかまいません。「会社の手元にあるかどうか」だけを確認し、この順番で取り戻してください。
| 順序 | このグループの内容 | 最悪の結果 |
| 1 | サーバーとドメイン | ドメインを他人に取得され、サイトごとインターネットから消える |
| 2 | データベースとバックアップ | 顧客リストや注文記録が復旧できない |
| 3 | ソースコードとリポジトリ | どんな修正もゼロから書き直しになる |
| 4 | 外部サービスと鍵 | 決済・SMS・メール送信がある日突然止まり、しかも穴が開いたまま |
一、サーバーとドメイン(請求書が誰宛てに届いているか確認):
- ホスティング事業者の管理画面アカウント:これがないと、引き落とし失敗に誰も気づけません。
- サーバーにログインする鍵やパスワード:これがないと、サーバーに何かあっても見ていることしかできません。
- ドメインレジストラのアカウント:更新を逃すとサイトが消えます。
二、データベースとバックアップ(退職したエンジニアかプログラムの設定ファイルに確認):
- データベースの接続アカウントとパスワード:これがないと、データは見えても取り出せません。
- バックアップの保存場所と頻度:確認していないのは、あるかどうかわからないのと同じです。
- 復元の手順:誰も復元できないなら、バックアップがないのとほぼ同じです。
三、ソースコードとリポジトリ(退職したエンジニアかリポジトリサービスに確認):
- 最新のソースコード。本番環境で動いているものと同じバージョンであること。
- リポジトリの管理者権限。これがないと変更を置く場所もなく、人を追加することもできません。
- プログラムを動かす手順書:これがないと、引き継いだ人は何日も推測することになります。
四、外部サービスと鍵(会社の支払い記録と照合):
- 外部サービスとアカウントの一覧:決済・SMS・メール送信がそれぞれどの事業者か。
- 各サービスの鍵がどこにあるか:鍵はプログラムと外部サービスをつなぐ通行証です。
- デプロイの手順:修正したプログラムをどうやって本番環境に反映するか。
12 項目のうち半分以上が「わからない」でも、慌てなくて大丈夫です。よくあることです。より詳しい進め方はシステム保守引き継ぎガイドという記事にまとめています。
取り戻せないときの対処:3 つの状況ごとの順序
- 本人と連絡が取れる場合:引き継ぎミーティングを設定し、項目をひとつずつ確認したうえで、各アカウントの所有者を会社名義のメールアドレスに変更してもらいます。パスワードをもらうだけでは移転になりません。本人がまた変更できてしまいます。
- 本人と連絡が取れず、アカウントが会社名義の場合:会社のメールアドレスから「パスワードを忘れた場合」の手続きを行い、上の表の順番でひとつずつ取り戻します。
- 本人と連絡が取れず、アカウントも個人名義の場合:会社の支払い記録から毎月引き落とされているサービスを洗い出し、各事業者に移転を申請します。多くの場合、会社が実際の支払い者であることの証明が必要です。
どの状況でも、取り戻した直後にやるべきことは、すべてのパスワードと鍵の変更です。前任者を信用していないからではなく、それらがどこに保存されていたか確認できないからです。
取り戻した後は、まず誰かに見てもらう。すぐ引き継がせない
必要なものが揃ったところで、本当の問題が始まります。このシステムを維持する価値があるかどうかです。コードが読める状態か、データを取り出せるか、バックアップがあるか、デプロイをやり直せるか——これらは経営者ひとりの判断や、次のエンジニアの印象だけで決めるべきではありません。エンジニアの採用はますます難しくなっており、人材不足時代の外注の考え方という記事で、多くの企業が特定の一人に頼らなくなっている理由を説明しています。まず誰かに見てもらってこそ、どんな人材が必要かがわかります。
Nerdtechnic(恩梯科技)がシステムを引き継ぐときの 4 つの約束
- 最初から最後まで同じチームが担当。引き継ぎ、保守、改善、継続開発を通じて、担当が変わるたびに会社の仕組みを説明し直す必要がありません。
- 見てから見積もり。健診は契約とは無関係で、結果を見てから協業するかどうかを判断していただけます。
- 何かあれば必ず対応。サーバーやサービスに問題が起きたら 1 営業日以内に対応、不具合を報告いただいたら 2 営業日以内に評価結果を返答します。
- 契約終了時、ドキュメントと記録は御社にお渡しします。担当が変わってもブラックボックスにはなりません。
一人が辞めたことで、会社全体のシステムが宙に浮いたままになるべきではありません。
エンジニア退職後のシステム引き継ぎは、私たちが Helper CTO として最も多く対応する案件です。会社の技術責任者のような存在でありながら、御社の社員ではなく、引き継ぎ後は同じチームが保守と改善を担当します。最初の一歩は 60 分のシステム健診です。コードを見せていただくだけでよく、本番環境のアカウント情報は不要です。3~5 営業日以内に、そのまま引き継げるか、先に整理が必要か、作り直したほうが安いかを明記した 1 ページのレポートをお渡しします。あの 12 項目が今すぐ揃わなくても、まずはこちらからどうぞ:Helper CTO:システム保守プラン。